帰ってきたぎんちゃん

~脱走猫ぎんちゃんを外飼い猫に~

横になって眠るぎんちゃんのお腹が呼吸で上下するのを、ただ、眺めているのが好きだ。この感覚をどう表現すればいいのだろう。傍らに小さな生き物が息づいていて、この同じ世界を、私とは異なるひとつの意識で受け止めている。そんな当たり前のことを感覚のみで存分に味わう。濃密な時間の中に入って行く・・・。(2018/06/24)


鈴の音シャンシャン

f:id:pastel-caree:20180621224235j:plain

ぎんちゃんを呼ぶといつもどこからか鈴の音がする。後ろ足で首元をカリカリ「(シャンシャンシャン)いるよ!」という合図だ。それからゆっくりと姿を現す。そういう使い方か・・・嬉しそうに小走りで寄ってくるとかじゃないんかい!嬉しそうに「にゃ~~~ん!」て鳴くとかじゃないんかい!へんなやつへんなやつへんなやつ・・・。

お泊り翌日のぎんちゃんは前よりもちょっとだけフレンドリーで距離が近かった。私のすぐ側でぐい~んと伸びをするから、やはり、つい、手が首元に伸びる。いつかの「!!!なにすんのよっ!!!」では無かったけど、かなり、嫌そうな顔をされる。まあまあ、と、尻尾の付け根をゴシゴシ。ちょっとだけ触られていたものの、するっと避けられた。

まあね、どうせね、想定内だけどね。昨日の晩とは別人(猫)格なのね。意味分かんないけど、ぎんちゃんルールなのよね・・・・。
触ったせいなのか・・・・いや、そうに決まっているんだけど、その後、若干広めの距離を保たれたわ。

こんなヘタレな私でもやる時はやるってことを覚えているのかな?
ぎんちゃん行方不明から2週間経って情報をいただいて確認ができた後、2日間、早朝と夕刻に出没ポイントに通って餌やりをしていた。ごはんをあげるとすぐ目の前で食べるのだけれど、ちょっとでも手を出すと「シャーッ!」なので、どうしたもんかとしばらく様子を見るつもりだった。

2日目の朝にいつもの場所にいたぎんちゃんは、前足が首輪に引っかかっていてピョンピョンと歩きにくそうにしていた。「ぎんちゃん、お手々、たいへん、取ってあげるから、おいで」と必死で呼ぶけど、無理だよね・・・。とりあえずカリカリを出して置くとピョンピョンとそばに来て、食べにくそうに食べ始める。そうっと触ろうとすると「シャー!」
どうしよう。。。。。

とにかく腹を空かせているので、警戒しながらも食べるのはやめない。チャンスは今しか無いんだよな。間合いを読みながら「今だ」と首根っこを摘んだ。初めてやったけど、ほんとに動けなくなるのね。固まりながらも私を睨むぎんちゃん。前足を抜いてすぐに離すと、勢いよく走り去っていった。

後から「なんで捕まえたまま家まで持って来なかったのよ・・・」と母に呆れられたけどなんかかわいそうでできなかった私はやっぱりヘタレだけどね・・・。私のおかげで足が自由になれたってこと、猫は理解できるのかな?

わかってくれたような気がする・・・・というのは、その数時間後に家のすぐ近くの塀の上を歩くぎんちゃんを見つけたからだ。あれは私の行く先をこっそりと付けて来ていたのだと思う。それから、数時間かけて玄関までおびき寄せ、なんとか家に入れたのだった。

慎重で臆病で警戒心の強いぎんちゃんはなんでもよく覚えている。時に警戒心を緩めて人と接する心地よさも知っている。晴れて”ごくごく普通の放し飼い猫”になるまではまだまだ時間がかかるだろう。当面は、雨宿り猫の生活がよろしいようで。まあ、しばらくはこんな感じでいいか。チャンスはいずれやってくる。ぎんちゃんはまだ、冬の屋外の厳しさを知らない ( ̄ー ̄)ニヤリ